歌詞のこととか

 残響さんにご返事を書いていたら長くなってしまったので、読みやすいように別エントリに。


 書き込みどうもありがとうございます。
 キモいさんの意味づけについては、作中ではそういうメタな言及は直接はないし、無理に意味づける必要もないのですが、自分の悪い癖です。星継駅シリーズは最初は低予算・低価格の慎ましい小品なのかなあと思っていたのですが、話が意外に広がっていったので、その都度なんらかの意味づけをしたいと思ったということもあるのかもしれません。そうでもないと、今回のお話はファンディスク的なドタバタでしたで終わってしまいかねないところもあるので。筆を走らせた即興的作品という面はもちろんあると思いますが、キモいさんがキモくて、希センセのお気に入りらしい智里が大活躍したという点でも、ちょっとした何かの仕掛けはあってもいいんじゃないかなあと。あと、屑は癒しですね(莞爾)。屑、ヒプノマリア・ゼルダクララ、アージェントという三角形が、無意味に楽しく駆動していました。
 暴力性の問題は、本質的には何も解決していないのですが、今では自分がどちらかというとキモい側の人間になってしまったので、もう「解決」するのがつまらないようにも思えるようになったというか。偽善なのかもしれませんが。エロゲー万歳です。
 マイラバは、前回のやり取りの後でCDを5枚くらい買ってしまいました。二十歳ごろからJPOPもすっかり聴かなくなってしまったので、ゼロ年代になってもまだ活動していたなんて知らなかった。今は青春から遠く離れた生活をしているからか、流して聞いてみても残念ながら一向に心に響かないのですが、あせらずにそのうち気に入った曲でも見つけられればと思っています。


 音楽は本当に素養も思い入れも薄い盆暗なので、ご期待に沿えるような文章もないです。昨年は他にも堀江由衣川田まみ詩月カオリのアルバムをいくつか買いましたが、残念ながらどれも期待はずれ気味でした(期待しすぎていたのかもしれません)。
 最近では、上坂すみれさんのデビューアルバムを買ってみました。偉そうな物言いになりますが、声優としても歌手としても彼女にそれほどの才能があるとは思っていませんし(まだ開花していないだけだったらいいですが)、ロシアの文化や社会に関する知識もまだまだ表面的ですが、そういうちょっとイケてない部分も含めてオタク領域におけるロシアのアイコンを担ってほしいなあと応援しています。星継駅疾走軌の感想で彼女とキモいさんを比べたのは、実はエールを送ったつもりでした。



 それはさておきCDですが、これは聴いていて恥ずかしくなるような偽物感に溢れた代物で、先日の花澤香菜さんのハイレベルな危ない音楽の後では、別の意味で戦慄しました。たぶん、ウォッカで流し込みながら聴くような音楽なのでしょう。一応一言ご説明すると、上坂さんはレトロ・ソビエト大好きなミリオタ女子で、「革命的ブロードウェイ主義者同盟」なる結社にファンたちを呼び集めています。ご本人自らネタにしているようですが、中二病的な装置でどこまでいけるのか真剣に試しておられるようで、その意味ではパンクになれるのかもしれません。歌にもおかしなアジテーションコールが入ったりするのですが、あんまり迫力がないので聴いていて恥ずかしくてダメージを受ける。はじめの数曲はDJがなんか回してそうなディスコ音楽調の曲なのですが、ディスコ音楽は明らかにブルジョア的なので檄文みたいな歌詞とまったく合ってない。後のほうで短調の軍隊行進曲のような歌があるのですが、こちらはいくらかましです(音楽としての価値はともかく)。上坂さん本人が歌詞を書いている曲は一つもなく、コンセプトはご本人が提案したのかもしれませんが、明らかに「他人の言葉」を歌っています。彼女は自分の大好きなロシアについて語るときも、作品名やお決まりの特徴でしか表現できず、それがまだ若い彼女の現時点での限界なのかなあと思います。
 その中で一番まともに聞こえる曲は、桃井はるこさんが作曲した「テトリアシトリ」という曲です。メロディもきれいなのですが、テトリス(ロシアで生まれたゲームですね)をモチーフに恋心を切なげに歌い上げた歌詞が見事な安定感を持っていて、全体的に不安定なCDの中でオアシスになっている。申し上げたとおり自分は音楽をほとんど聴かない人間ですが、これまで聞いた桃井さんの歌だけは歌詞がうまいなと思います。十代の頃に聞いていたJPOPは、当時の自分にとっては背伸びした歌詞だったし、明らかに日本語を馬鹿にしたようなものも多かったので、断片的にしかかすらなかった。浅慮な自分は、好きになろうとした歌手(当時流行っていたもののうちミスチルスピッツ、サザン、ジュディマリマイラバ、おまけでYen town bandとか)の歌詞を真面目に読もうとすると、自分にとっては微妙なものばかりだったこともあり(かっこつけすぎだったり、雑だったり、自分とは遠すぎたり)、理想の歌というものにたどり着けず、JPOP全体を否定して聴かなくなってしまいました。その点桃井さんは、適度な距離で日本語と付き合っているなあと思います。挙げると色々ありそうですが、例えば「かがやきサイリューム」とか「泳・げ・な・い」とか、歌詞と音楽がきれいに合っていてうまいなあと思います。
 上坂さんも桃井さんを大変尊敬しているということなので、いつか才能を開花させてほしいものだ、というのが感想でした。好き勝手書いてしまいました。人の好みは様々なので、素養のない人間が書いても業がさらされるだけですね……