映画『昔の暮らしに取材したドラマ』(うまく訳せん)

Драма из старинной жизни (1971)

 これは一段格上の映画だ。レスコフの短編「理髪師」を原作にし、ソヴィエト映画の至宝エレーナ・ソロヴェイを主演に迎え、俳優たちの演技もカメラワークもかなり丁寧に作りこまれている佳作。恥ずかしながらぼくのロシア語力では聞き取れなかったところがけっこうあったんで、見終わってからカビだらけのレスコフ選集を引っ張り出してきて、20ページほどしかない原作を読んでみたところ、いかに映画では原作を膨らませているかがわかった。といっても忠実だけど。
 リューバを慰める家畜番女が飲む、ウォッカを入れる小瓶флаконが民衆語訛りでплаконになってるのが悲しい。愛しあうリューバとアルカーシャが夢見てたどり着けなかった桃源郷フルシューク、そこでは「空は青く、家々は白い」。このイメージ(というか、視覚イメージはなくて、原作にもない、映画オリジナルの言語イメージ)だけが、まるで当時のソ連を反映するかのような、社会の歪みを抱えたロシアのよどみを伝えるスクリーンに、清涼をもたらす。
 あと、エロゲーマーとしては、召抱えるお気に入りの農奴女優に「セシリア」(何かの聖女?)のコスプレをさせて肉体奉仕を強要する田舎の伯爵、っていうのがかなり黒く思えたよ。