西尾維新、戯言シリーズ1・2

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 (講談社ノベルス)
 第一巻『クビキリサイクル』は面白かったけど、第二巻を読んだら印象は忘れてしまった。
 で第二巻『クビシメロマンチスト』。シリーズ中で一番面白いとの評価にたがえず読み応えがあった。構成や文体に関する細かい感想はまたの機会にするとして、とりあえず素直な感想。
 小説はよい。エロゲーの主人公は高校生ばかりだけど、小説には大学生もいる。まあ、この年ならもう社会人が主人公の話を読んでいなきゃおかしいんだけど。
 すぐ社会や世界のせいにするのはだめな証拠だけど、とりあえずそこら辺から始めるとして、今の世の中ではキャラとしてその場にふさわしい振る舞いをすることを強要する力が強くて(あるいはそんな力に対して弱い人が多くて)、コミュニケーションはどこか歪みを抱えている。ストイックに論理的に自分が本当に好きなスタイルを貫ける人は少なく、少なくとも僕はその辺は根性なしで、いつも妥協ばかり。さらに惨めなことには、その妥協を他人にも強いる、つまり甘える。そういうことが嫌な感じに心の中で反響して熟成されてくると、何をしゃべっても自分の言葉に後悔するばかり、言葉を言ったそばから引っ込めたくなる、生まれてきてごめんなさいな人間になってくる。そんな戯言使いには言葉は残酷で、無責任な振る舞いで話す者も聞く者も傷つける。はじめはコミュニケーションの断絶をきちんと表せる主人公が少し羨ましくも感じた。ノルウェイの森なんかをリアルタイムで読んでた(リアルタイムの小説じゃないけど)当時の若い人たちなんかはこんな感じで読んでたのかなあなんてのどかな感想を抱いたり。クロスチャンネルみてーだなーとか思ったり。でも主人公がいっぱいいっぱいになってきて、僕もいっぱいいっぱいになってきて、言葉はあくまで残酷で、かっこよく書いてあるけど主人公はやっぱり無様で。かっこよくさえもない僕の人生はさらに無様で、それを受け入れてやる!なんて言えるような気力もどうやら僕にはなくて。美しいものなんてあったとしても、僕が近づいていって触れるわけにはいかないのだろう。巫女子に「甘えるな」としかいえない主人公は、疲れ切っている。本当は違うこと言えたらと思っているのかもしれないけど、そうとした言えないっていうのが痛々しい。そのうち壊れでもしたら、思考を停止してバカな浪費人生を送ることになるのかね。僕はそんな感じのバカっぽいね。壊れたことすらないけど。