ラノベ片思い

DDD 1 (講談社BOX)

DDD 1 (講談社BOX)

 奈須きのこ氏の作品は、Fate/stay nightの体験版をやって、あとはアニメを見てたくらいなんで、ちゃんと読むのはこれが初めて。キャラデザと設定はやはりいいので、フェイトは何度も買いそうになったけど(そのたびに値段でためらった)、これでひとまずは未練を断ち切れるはず。というのも、やはり言われている通り、このライターは(バトル)アクション描写の人だなあと納得できたので。個性的なキャラクターを作り出してぶつかり合わせる。面白いなあ、ふーん、という感じで、あまりこちらの中にまで切り込んでくる切実さはない。ゲームなのだ。でもこれも小説じゃなくてエロゲーだったらまた別のものになったのかもしれない。Fate/stay nightだってきっと面白いのだろう。何だかんだいってイメージアルバム「Wish」はなぜか持っててけっこう好きだったりするし。
 あと、文体は特にぶっ飛んだりはしていなかった。これは期待しすぎだった。いわゆるDQNなところがある主人公の語りで、その語り口はあまりこなれておらず、ややすべり気味。決め台詞の出し方がうまいとのことだけど、これも特に冴え渡っていた感じもなかった。フィクションである軽さが抜け切らなかったからか、フォントとかもそうだけど、過剰にカッコつけたスタイルのせいか。


狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

 微妙な小説だ・・・。平日昼間は、いかに金儲けができるか常に考えろ、客に気に入られるよう媚びへつらえ、営業の世界は厳しいぞ、でも楽しいだろ、と上司や先輩方から脳みそをレイプされ続けているのに、ラノベでもまた金儲けと相手を出し抜くことばかり考える話ですか・・・。そんなに嬉々として投機や売掛けや営業スマイルの話をしないでください・・・。きついっす。
 あとヒロインのホロは某ランキングで2006年の女性キャラクター部門で1位を取ったらしいけど(本作の購入動機は主にこれ)、これもちょっとなあ。やたらとモラルと警句を垂れる教育的なヒロインですね。彼女を描写する筆も何だかネチネチとしています。
 衝動買いだったけど、案の定ハズレ気味だった。中世ヨーロッパの都市経済の黎明期を舞台にしたらしいその設定はなかなか腰の据わったものだとしても(ちょうど今阿部謹也の『中世の星の下で』を読んでいるのでちょっとリンク)、青臭い文化系大好きなダメ営業マンには困った本だった。もっと抒情に流れて。中学高校の頃だったこういうラノベでも楽しめたんだろうなあ。最近は時間もあまりないし、やはりもう少しとんがった文章のものでないとつらい。