だらだらラノベ

 定金伸治『ジハード』の1巻(asin:4087476154)と2巻(asin:4087476278)を読んで、ついでに最終巻までのアマゾンの紹介とかを見てみたら、いつのまにかはまりつつある自分に気づいた。期待して読み始めて垢抜けない英雄戦記物だったので、ちょっとがっかりしていたはずなのに。なんだかんだいって喜怒哀楽がはっきりしているスケールの大きい話は好きだった(うたわれるものにもやられたんだった)。エキゾチックな中世イスラム世界の自然も、気温の寒暖とか、昼夜の色のコントラストとか、乾いた空気と湿った涙とか、男臭い話や女の子らしい話や。あと全裸のエルシードとか、とても正しい気がする。イラストがないことも含めて、正しい。ラノベのイラストは時として近すぎる。何百年も前の遠い異国の話なんだ、これくらいの距離感が適切なのではないか。文体のラノベ的な軽さ・弱さは近かったりするんだけど・・・。いずれにせよ、そこそこ愛着がわいてしまったとはいえ、読み急ぐような物語ではないようだ。いつか機会があれば続きを読もう。この中東の自然と切ない話というのは期待できる。予定調和の切なさなのかもしれないが。
 四方世界の王シリーズのほうは、1巻で下手に期待をしてしまったために、今後がちょっと不安になった。たぶん戦争とか戦略とか、ヒーロー格のカリスマたちの群雄割拠みたいな話になってしまうのだろう。まあそれでも舞台は古代の中東で恋愛物なんだからそれなりに面白くはなるんだろうけど。先が読めた気になるってのは百害あって一利なしだな。
 姫神はすでに全巻アマゾンで注文してしまったので読むしかない。


 あとは音楽物のラノベを少々。
 杉井光さよならピアノソナタ』(asin:484024071X)。いくつかのところで勧められているのを見たので読んでみたけど、そんなにすごい小説ではなかった。キラ☆キラの前半部みたいな感じというか。ラブコメ的な掛け合いがこなれていて、いまいち新鮮味がなかった。まあでも、やっぱ音楽っていいなあという気にはさせられた。音楽を愛する様子はしっかり描かれているから。バッハの平均律クラヴィーアなんてよく聴くものが出てくるとやはり嬉しい。意地悪な見方かもしれないが、小説で天才性を描くには音楽を扱うのが一番楽なのかもしれない。文字で音楽を表すことは出来ないからだ。小説で天才作家を扱うと大抵胡散臭いし、絵画は物質的なものなので限界があるけど、音楽は消えてなくなってしまうものだから。作品の魅力が聞き手にもかなり依存していることを考えると、音楽を再現することはほとんど無理なことに思える(素人だからそう思えるだけなのかもしれないが)。1巻が一番面白いらしいし、これもとりあえず続きは読まないことにした。
 森田季節ベネズエラ・ビター・マイ・スイート』(asin:4840124221)と『プリンセス・ビター・マイ・スウィート』(asin:4840124981)。こちらは『さよならピアノソナタ』よりはまだキャラクターに新鮮味はあるけど、文章が残念な感じなので読んでいて快感が少ない。まあある意味閉塞感は伝わる文章なのでいいのかもしれないけど。設定も子供っぽいかもしれないけど閉塞感は伝わる。チャチャがよかった。