一音節の一日

 今まで読んだり聞いたりしてきたロシア語が割とインテリ系の流麗なロシア語だったせいか、あるいは浮世離れした楽しい話題だったせいか、今回はきつい。ヨップだのブリャッチだのピズジェッツだのフイだの、威勢のいい悪態ばかり聞かされて、下品な上司に無茶苦茶な使われ方をされて、僕も心の中で何度も悪態をつきそうになった。荒れ果てた風景と教会の静かなたたずまいに何とか安らぎを見出せれば。
 これが悪態ではなくエロゲー的な卑語や罵りなら楽しめたのかもしれないが。悪態は、少なくともロシア語においては、話の聞き手ではなく、誰ともなく虚空に向かって放たれる、リズムが重要な機能を果たす間投詞であることが多い。だからか知らないけど1音節の言葉が多い(そういえばデルジャーヴィンやブリューソフは一音節の単語だけでまじめな詩を書いたりしていたか)。半分は放送禁止用語から成り立っているとか何とかで有名な、ロシアのパイロットの通信の会話も多分、リズム的な要素としての悪態から来ているのだろう。日本語は1音節の悪態が少ないから大人しいのだろうか。ロシアでは善良な小市民から会社社長までみんな、「これじゃ、まったくのマンコだよ!」「チンコじみている」「今日はなんて、バイタ、天気だ!」「オマエノカアチャンヲヤッタ!、こんな給料じゃなんの足しにもならない」などとひっきりなしに悪態を吐き散らす。僕のロシア語の危機だ。大切にするほどのレベルでもないけど。
 「ぼーん・ふりーくす!」等のexeファイルが消えたのは、どうやらウイルスに感染したせいらしい。ネットカフェや商談先でフラッシュメモリアンチウイルスソフトに引っかかるのでavast!を入れてみたところ、37個も感染ファイルが出てきた。油断してた。というかひょうとっとして方々に撒き散らしていたりして。