NieA_7とか

 アニメの感想はうまく書ける気がしないので書かないことにしているのだが、近年はニコニコ動画で無料で見られるのを中心にけっこう見ていて、生活のリズムの一部になっている。傑作といえなくても、そこそこ面白いアニメ(今なら進撃の巨人とかレールガンとかはたらく魔王さまとか)を見ると頭が程よくリラックスして疲れが取れる。他にも昨日から今日にかけて、ネットで公開されていた「秒速5センチメートル」、最近近所に出来たブックオフで100円で売っていたONEのアニメの1巻、同じく1巻250円で売っていたニアアンダーセブン(4巻だけ抜けていたけどアマゾンで500円で売っていて明日届く)とか見ていた。「秒速」の作者のアニメは大昔に「ほしのこえ」を東浩紀が褒めていたか何かで知ってレンタルビデオ屋で借りてみて以来で、やっぱり同じように感傷以外に何もないアニメだけどその感傷がかなりの執念と繊細さで表現されていて、その感傷を受け止めてくれる対象としての純朴で可愛い女の子というのは素晴らしいけど、それでも感傷だけのものだから手放しでは楽しめないものだった。ONEは「秒速」の後に見ると絵の作り方が違いすぎて、演出も独特すぎて、ほとんどホラー映画かアウトサイダーアートを見ているような薄ら寒い迫力があった。絵に味があることが長所であるニアアンダーセブン(2000年)でさえも、10年ぶりくらいにノートPCで見てみたら意外に線が太くて古く見えたのだから、最近10年くらいでアニメの線とか色はずいぶん変わったのかもしれないと思って少しさびしくなった。エロゲーにたどり着く前の2000年代前半、エヴァ(はまったのは2001年くらいだったか)で掻き立てられたオタク熱をどこへ向けていいのか分からず、2ちゃんのエヴァ板をうろついて他に面白いアニメがないか探す日を送る中で知ったのが安倍吉俊関連のアニメだった。当時は学生でお金を持っていなかったし、本以外にお金を使うのは馬鹿らしいと思っていたから、アニメはレンタルビデオ屋で借りることが多かった。所有欲を書き立てられたとしても、ヤフーオークションで安い中古にしようか中国の海賊版にしようかと延々と悩むくらいに時間があった(今はレンタルビデオ屋もヤフオクもすっかり利用しなくなった)。久しぶりにニアを見てみて、やっぱり面白かったのだけど、この10年の間にアニメの作り方も僕の生活もすっかり変わってしまったのにまゆ子は相変わらず不安定なモラトリアムの中を生きていて、なんだか申し訳なくなったというか何というか。気がついたら生活の中で荏の花のようなレトロな風物を見る機会はほとんどなくなっている。住んでいるところは平成的な住宅地だし、家と会社の往復以外はほとんど外出がないし、出張で地方に出る機会もほぼない仕事。テレビのない生活が5年以上続いていて、動画で地方を見るということがほとんどない。そこまで徹底的に古いものから遠ざけられてみて、あらためて時間の止まってしまったかのような古いものたちや訳の分からない宇宙人たちに囲まれて、うだつの上がらない日々を風通しのよい貧乏下宿で送るまゆ子の鬱屈とか、夏の空気とか、屋根の上からの景色とかを見ると、安心感があるというか、そこに留まってくれているまゆ子に感謝しなければならないような気になる。考えてみるまでもなく、この10年の間にモラトリアムを物質的には脱して自活するようになった僕も相変わらずうだつが上がらず、訳の分からないものに囲まれて日々を送っていて、このまま中年になっていきそうな気配もあるけど、まゆ子の方がもっときちんとそんな生活に縛られて振り回されて、きちんと焦燥感を抱えてうだうだ悩み続けてくれているから、僕のほうは息をつけるのかもしれない。久々にニアのスレッドを見てみたら(今のスレッドは2009年からある)、もう10年たってまゆ子も大学を出て出来る社会人になっているんじゃないかとか、でもまた荏の花に戻ってきちゃってるんじゃないかとか、後日談を作ってほしいとか、のんびりした書き込みのやり取りがあってちょっとほほえましい。この10年間でブックオフとかアマゾンとかでアニメが中古なら安く簡単に手に入るようになったし、ニコ動などで無料で見られるものも多いし(業界は相変わらず苦しいみたいで申し訳ないが)、新海誠以来か京アニ以来か知らないがアニメの線や色もだいぶ変わった。10年後、40台半ばになっている自分を想像したくはないけど、そのときにもアニメを楽しめる余裕がありますように。