翠の海 (65)

 翠色は寒くて温かい。
 すべてが終わって重苦しい記憶と汚れた手が残されても、みちるはやってきたことを後悔せずに、精一杯やり通したことと良い出会いがあったことに感謝しているというのがありがたい。大人がいない舞台、大人がお金だけ出したゴミ捨て場のような舞台が、子供たちのがんばりで温かいと少しでも思える場所になった。それが大事なことなんだろう。タイトル画面の不思議な音楽と、想像の緑色。ファンタジーはなかったけど、音楽も絵も嘘を本当にしてしまうような優しさを持っていた。本当は優しくていい子達がそれぞれの楽園を見つけるための場所になったのだから、救いのある作品だと思える。
 蛇足だが、濡れ場もよかった。もう少しいちゃいちゃしたかったけれども、ストイックというか何というか。お嬢様であることはあくまで表に出てこない設定だけど、子供たちが何とかして手に入れた楽園を大切にしようという気持ちに、優しい純粋さがあるように思えた。